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That's Japanシリーズ

現実はマイナーの中に

現実はマイナーの中に

江川達也 著

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価格 755円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-54-2
発売日 2004/06
ページ数 128ページ
版型 A5変形判 ソフトカバー
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概要

日本人の本質を舌鋒鋭く喝破する、マンガ家による日本初のマンガ論

『日露戦争物語』を描きながら江川達也は気づいた。重大な問題が起きると、この国では政治家・軍人はもちろん、官僚もマスコミ人も「自己責任」に問題をすり替え、解決を先送りすることを。江戸から明治、戦前から戦後と、断絶した歴史に安住し、誰もが「国益」に無自覚で、国を担う人材を育てようともしない。思想や文化のオリジナリティすら怪しくしてしまった。では、日本を正していく道はないのか?ひとつの手がかりはサブカルチャーの中にある、と彼は確信している。しかも、マイナーな文化の中にこそ私たちが見習うべき「現実」があると考えている。本書は異色のマンガ家・江川達也のマンガ論であり、サブカルチャー論であり、日本論である。「マンガ家になって成功する」夢をかなえたのちも、「妄想」たくましくリアル度を増していく江川の挑発の書でもある。

目次

サブカルチャーの中心はマンガだ

欧米人より子どもを大事にする日本人
外国で生き残るのは「数学」か「土着文化」
「パクリ」か「オリジナル」かで葛藤した手塚治虫
オタク文化は戦後教育によって生まれた
二重の幼児性からなる日本のマトリックス世界
真価が問われるマトリックス崩壊後の日本
サブカルチャーには土着的なものが残っている
水木しげるはマンガ界の宝
いまの言語で過去を見てはいけない
自分が感じる違和感に正直かどうか
認められたい気持ちとの葛藤
土着文化のヤンキーマンガに希望がある
マイナーっぽさをまとったメジャー
マンガはアニメより試行錯誤が許される
どこか嘘くさい宮崎アニメ
マンガ家のエネルギーと社会が拮抗していない
教育にハッピーエンドは危険
マンガファンは現実から逃げている
「数学と古文」の両軸をもたなければならない
日本人は場当たり的に何でも破壊する
本来のテイストをいかに味わえるか
いくつかの究極の視点からすべてが見える
守られていると見えないものがある
土着性を排除する記号的な絵
手塚治虫はマンガ家ではないかもしれない
絵は言葉よりローカル性に富む
言葉にならない表現こそがマンガのもつ力
ツールにより表現方法や表現力が変わる

リアルで「本気」なマンガを目指して

マンガのマーケットは日本が最大
能力のある人間はマンガ家になるしかない
本気のマンガにしか反応しない
黎明期のマンガは嘘くさくなかった
作家の本気を薄めるシステムがある
いまの編集者には謙虚さが足りない
優秀な編集者は五〇人に一人
縮小再生産、パクリ系が主流になっている
マンガがメジャーになり衰退が始まった
すべての読者を切り捨てる
常に未知の世界への目標を立てる
歴史を法則化するとどうなるか
日露戦争が一つの分岐点になっている
ドラマは不都合をカットして偶像をつくる
大東亜戦争はイラク戦争より防衛的な戦争
山本五十六、石原莞爾を描きたかった
経済、軍事以上に言語が大事
いまの作家は司馬遼太郎を超えなくてはならない
リアルを最後まで追い続けなければならない
賞をまったく取ったことがない
マンガ評論家は知的レベルが低い
いまの教育にいちばん足りないのはソフト
聖書などの原文のマンガ化をやりたい
写本で平安朝にトリップできる
『源氏物語』の色事に関する言葉が素晴らしい
頭がよくなるマンガのニーズがない
リアルなヒーローは陰で正義を行う
日本にはハイレベルな文化的土壌があった

書評・感想

「現実はマイナーの中に」(江川達也著)を読んで

数学的「論理」の部分と古文的「非論理」の両方が大事だという区別は、宮台真司の「不条理性の感染」や苫米地英人の「変性意識論」にも通じて非常に面白い。また、グローバリズムとローカリズムの対比は、戦前の「脱亜入欧」と「亜細亜主義」の論争のアクチュアリティーを今こそ問うていて、思想史的な観点からの考察をぜひ待ちたい。(愛知県 23歳男性)
たしかに思っていることを堂々と言う機会は少ない。また、公の場で本音が語られることもない。故に、本書のタイトルは正にその通りであるといえよう。“古文と数学だけが世界で通用する”という発言(考え)は非常にうなずける面があります(「ムカツク」しか知らないとワンパターン思考しか生まれてきません、きっと)。また、宮崎駿氏、手塚治虫氏の功罪についても興味深いものがありました。(石川県 男性)