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That's Japanシリーズ

日本映画は再興できる

日本映画は再興できる

李鳳宇 著

価格 750円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-36-8
発売日 2003/06
ページ数 128ページ
版型 A5変形判 ソフトカバー
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概要

「のど自慢」「シュリ」などで映画界に大旋風!!

「洋画」と「邦画」しかない世界、日本人に「興味をもたない」日本人……映画の凋落の原因はつまるところこれに尽きると李鳳宇は語る。世界の映画は常に新しい血、少数者の価値観に支えられ、発展してきた。「ニューカマー」が活躍するハリウッドはその典型だ。しかし、自らの依拠する文化も誇りも見失い、哲学もない日本にかつての栄華が取り戻せるだろうか?
李鳳宇はプロデューサーであり、配給、劇場経営もこなす。新しい価値観をもつ日本映画をつくるために、この三つの役割を必然として引き受けてきた。
救いようもなく弛緩した業界のシステムから離れ、少数者としてのバランス感覚と情熱で日本映画をつくる……そこに一筋の光が見える。日本映画は復興できる。

李鳳宇(シネカノン代表)

1960年京都府生まれ。朝鮮大学卒業後、パリに留学。映画プロデューサー。89年に配給会社シネカノン設立。アジア・ヨーロッパの秀作を中心に配給活動を行い、93年、初製作の『月はどっちに出ている』が興業的にも成功。00年には『シュリ』を配給し韓国映画ブームの火付け役となる。94年から銀座、渋谷で劇場経営も手がけ、映画への情熱と優れたビジネス感覚で日本映画界に新風を吹き込んでいる。

目次

日本映画のシステムを解剖する

ブロックブッキングに安住してしまったメジャー
「見せたい」という観点を失ってしまった映画
自浄作用を失っているメジャー
“スター ”が存在しない日本の映画界
見るほうも演じるほうもつまらないテレビドラマ
消費経済のサイクルの中でつくられる「俳優」
哲学をもたない映画人
方向性をもたない舵取り
日本型システムから抜け出せない系列館
映画館も変わらなければいけない
有名人を安易に監督に起用する
監督を志望する人
人材を育てるシステムがない
日本の映画システムに先鞭をつけるシネカノン
ハードではなく、ソフトが大事
クオリティで選んだ映画が財産になる
異文化の絡み合いで触発されるイマジネーション
映画は一種のギャンブルだから、負けを少なくする
10年後にも評価される映画をめざす
プロフェッショナルなプロデューサーが生まれつつある
プロデューサーは観客の代表だ
映画監督とどう付きあうか
プロデューサーは最後まで面倒をみる
仕事を組む監督、スタッフの条件
スタッフと価値観、戦略を共有する
映画は常に新しくなければならない
映画は思い込みの強いほうが勝つ
映画を商品として見てしまう不幸
映画をビジネスとして成功させるアメリカ
芸術とエンターテインメントの境目

新しい価値観で日本映画をつくる

李の名前で生きてこそ
映画ならできると思って「シネカノン」をつくった
借金をしてイチかバチかでつくった『月はどっちに出ている』
映画館で学ぶべきこと
新しい映画づくりの欲求
父の人生、父の民族を大切にしたい
「木下」という名前の朝鮮人が、「李」という名前を取り戻す
常に二者択一を迫られる
二重性ゆえのバランス感覚
名前から人間の誇りも歴史も生まれる
いつも何者かを問われる自分
異質な日本人だからこそわかる
在日としての自分のルーツを探る
一所懸命生きる日本人の美しさがある
多様な価値観が社会を、人を豊かにする
映画はストーリーではなく、人物だ
映画の醍醐味は共同作業にある
他者に二者択一を迫りたくない
映画に国籍は必要ない
日本はアジアとどうかかわっていくか
新しい価値観をもった日本映画をつくりたい
「これは自分だ」という市井の目線が大事だ
日本に興味を抱かなくなった日本人
隣にいてほしい人間を描きたい
「誇らしい日本」、「見せたい日本」を映画に

書評・感想

「日本映画は再興できる」(李凰宇著)を読んで

日本映画、特に大手資本が芳しくないのが頷ける。作品の質もさることながら、その興行体制にも問題ありそうだ。日本人の感性にあった、本当に見たい作品を見る機会が少しずつながら増えるようになり喜んでいる。その陰でシネカノンの存在が大きいと思う。ハリウッド資本に侵されている日本の映画界に刺激を与える一冊になればと思う。「人が死ぬ より、人が生まれる映画をつくりたい、特に人が人をむやみに殺すようなことはしたくない……」という李氏の言葉に共感する。(三重県 男性)
映画業界(特に日本)のことがよくわかり、非常に勉強になりました。「のど自慢」は非常によい映画だと思っていましたので、李さんの考えを知り、その理由がわかりました。一見派手に見える業界にいながらとても地に足のついた考えで、良質な作品を世に送り出していってほしいと切に願っております。(兵庫県 39歳男性)
私自身が映画館で働いていることもあり、大変興味深く読みました。日本映画にたずさわっている人々、会社はあまり儲かっていなかったり、給料が安かったりすることが多いのですが、(私もその一人)どうか李さんは儲けてメルセデスに運転手付きで乗るようになっていただきたいと思います。「映画界は儲かる」と思ってくれないと良い人材は寄りつきませんから。(東京都 男性)
世代を越えて、共感するところ多し。それにしても当今の若者たちに監督志望が少ないとは、ショックです。(東京都 男性)
映画「パッチギ」「月はどっちに出ている」をみて、この本を読んだ。非常に面白い。こういうプロデューサーが日本にいることは映画にとって幸せなことだろう。またこういう人の本を出版するウェイツの慧眼に感心した。(神奈川県 男性)