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That's Japanシリーズ

中東のゲットーから

中東のゲットーから

重信メイ 著

価格 750円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-31-3
発売日 2003/06
ページ数 128ページ
版型 A5変形判 ソフトカバー
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概要

体験をまじえて、いま語られる事実と真実のパレスチナ

歴史は皮肉だ。有史以来、流浪とゲットー暮らしの辛酸をなめてきたユダヤ人はイスラエルという国をつくるや、パレスチナ人をゲットーに押し込めた。土地も、水も、移動の自由さえも奪われた中東のゲットー。
人種、宗教が違うから泥沼の戦争が続くのではない。徹底した差別と弾圧で人々の尊厳を奪い、武力で土地を奪うイスラエルの意図が無くならない限り、戦争は続く。同時多発テロ以来、「パレスチナ=テロの温床」という誤ったイメージが世界を駆けめぐっている。アメリカはもちろん、日本でも……。しかし、真実は?
重信メイは、パレスチナの現状を冷静に世界に伝えようとしている。メディアを妄信して疑わない日本人にも、パレスチナと日本をつなぐ熱い思いを伝えようとしている。

重信メイ(ジャーナリスト)

1973年レバノン・ベイルート生まれ。日本赤軍のリーダー重信房子とパレスチナ人の父の娘として、無国籍のままアラブ社会で育つ。97年、ベイルートのアメリカン大学を卒業後、同国際政治学科大学院に在籍。母の逮捕を機に来日し、2001年3月に日本国籍を取得。現在、塾講師のかたわら様々なメディアでパレスチナ問題を中心に、アラブからのまなざしを伝えている。著書に『秘密』。

目次

パレスチナ難民の暮らし

場所によってちがうパレスチナ難民の生活
自治に基づくレバノンの難民キャンプ
戦争ごっこをして遊ぶ子どもたち
種々の団体が教育を担っている
難民キャンプでの楽しみ
アラブとユダヤは兄弟だと教えられる
ユダヤ教徒とユダヤ民族
高等教育を受けるための相互扶助システム
近隣から見たパレスチナ人のイメージ
教育こそが生きていく糧
帰るべき場所はいまどうなっているか

パレスチナというゲットー

イスラエルの中のパレスチナ
どんどん狭まっていく国境
まやかしの 「和平交渉」
拡大し続けるエルサレム
発端はイギリスの二枚舌外交だった
イスラエル建国はパレスチナ人排斥から始まった
生活基盤を徹底的に破壊する
家を壊しながら捜索する
エルサレムのパレスチナ人
ガザの地獄
外出禁止令が人々の生活を奪う
パレスチナ解放をめぐる路線のちがい
入植地という 「洗脳」 装置
入植地はどんどん広がっている
イスラエル国内にも動揺が生まれている
それでも 「和平」 に希望をもった
国際監視を妨害するアメリカ

日本とパレスチナをつなぐもの

闘わなければ生き残れない
共存をはばむ差別的な法律とその運用
パレスチナ人も普通に友だちになれる
厳格なユダヤ教徒が叫ぶイスラエル反対
便利なニュースはかなりあやしい
アラブロビーの必要性
アラブ世界を分断する政治
お互いを知って見えてくるもの
日本の報道は個々人に関するニュースになってしまう
ニュースに触発される会話
行き先も外も見えない車に乗っている
「このまま生きていて大丈夫」という落とし穴
均質な情報が若者をスポイルしている
日本はアラブより個々人が孤立している
日本が好き、パレスチナが好き
気持ちは日本人、キャラクターはアラブ人
中東への架け橋
世界市民を目指して

書評・感想

「中東のゲットーから」(重信メイ著)を読んで

パレスチナ問題については、最近特に新聞等のメディアで盛んに報道が為されているが、そのほとんどが“外”からの視点に基づいている。著者の重信氏はレバノンで生まれ、20年以上彼の地で暮らしてきただけあって、パレスチナ難民およびイスラエル占領地下の人々の日常の生活の実際を“内”からの視点で捉えており、彼らの置かれている不条理さをはっきりと映し出している。(東京都 37才男性)
パレスチナ問題を内部から告発する視点に大変共感しました。共感の意味は「いたたまれない」気持ちが沸くということです。メイさんが感情的ではなく、冷静にパレスチナ問題を語っている姿勢に、私は感心せざるを得ません。日本社会でパレスチナ問題を真剣に考える世論が少しずつでも起こってくることを願うばかりです。私は高校で非常勤講師もしているので生徒にも微力ながら伝えていきたいと考えております。(東京都 30歳男性) 中東問題を扱った本もいろいろ読んでいるが、実際にそこで生まれ育ってきた人の説明はとても興味がわいた。文もとても読みやすくそれでいて中身もそこそこ充実していて良かった。メイさんのような人がテレビにどんどん出てきて中東の話をすると私たち日本人ももっともっと関心が持てると思う。そんな日を楽しみにしています。(岐阜県 51歳女性)
メイさんが実際に経験された、パレスチナの日常と、パレスチナ問題に関する基本的な背景が書かれていてとても分かりやすく、また身近に感じることができた。最後に、日本のメディアなど伝え方の問題が指摘されていることは印象に残った。(兵庫県 25歳女性)
重信メイは日本にとって貴重な存在だと思う。中東に目を向けない日本の澱んだ空気に、風穴を空ける存在として、これからもぜひ日本と中東を行き来し、我々に生き生きとした情報をもたらしてほしい。彼女の活躍を心から応援したい。(北海道 44歳女性)
すでに知っている事実と内容が重複するのではと思っていたらさにあらず、他の日本人とは違ってリアルタイムの情報が伝わってきました。知りたかったレバノンのキャンプの様子も現地に里子を持つ私としては、実際に生活していらしたメイさんの口を通してよく理解でき、大変ためになりました。メイさんを応援します。(新潟県 43歳女性)
実際にアラブで育った人の話が聞けることなんて非常に少ないので、とても興味深かった。私自身の知識の偏り、経験のなさが実感できる一冊だった。むずかしい国際関係論の本を読むよりもこうして現実にアラブで生き、考えた人の意見を聞く方が真の国際問題の解決につながると思えた。(兵庫県 20歳女性)