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That's Japanシリーズ

30年後の「大学解体」

30年後の「大学解体」

牧野剛 著

価格 750円(本体価格)+税 
ISBN 978-4901391-28-3
発売日 2002/12
ページ数 120ページ
版型 A5変形判 ソフトカバー
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概要

カリスマ塾講師が自らの全共闘体験を通して「大学」を語る

牧野剛は全共闘「原人」である。彼は敗戦とともに生まれ、目覚ましい経済復興と「民主主義」教育の中で育った。全共闘運動は「戦後の完成の証し」と語り、戦争を記憶し、国をつくる志に燃えた60年安保のエリート世代の闘いとは一線を画す。
大学の大衆化と団塊のパワーを背景に、全共闘は教育を社会を語った。「大学解体」「自己否定」、そのスローガンには広範な問題提起があった。東京と京都に挟まれた名古屋で、牧野たちはユニークな戦いを続けた。しかし敗北した。
その後、彼はプロの「テスト屋」になった。予備校の教壇から教育を、制度を、子どもたちを見続け、予備校生とデモにも出かけた。
全共闘運動から30年、皮肉にも「大学解体」は進行している。当時の闘いを語り伝え、教育の現場から解体の意味を問い直す。

牧野剛(河合塾講師)

1945年岐阜県生まれ。名古屋大学文学部卒。名古屋・東海地区の全共闘運動の指導者として活躍。現在、河合塾講師。独創的なアイデアと手法で塾の全国展開を進め、衛星受講システムも確立。84年の共通一次試験問題を適中させる。95年には、反五輪・反管理教育・反万博を掲げて愛知県知事選に立候補。著書に『ことばはちからダ!現代文キーワード』『河合塾マキノ流!国語トレーニング』など。

目次

全共闘運動は「戦後の完成」の証しである

全共闘運動は日本の矛盾から生じた
60年安保闘争はエリートによる闘争だった
戦争がすり込まれている60年安保世代
全共闘以降、「産学協同」は進んだ
全共闘は社会に何を提起したのか
体制に鋭く銛を打ち込んだ
周辺にこそ全共闘精神が生きている
利用できればどこでもかまわなかった
地域を無視する党派の体質
「もう一度地域からやり直そう」と決意する
「名古屋の特殊性」というバランス感覚
全共闘は20年後を予感していた
中央大学が多摩に移転した理由
学生は街にいてこそエネルギーをもつ
郊外に出た大学は偏差値が落ちる
吉本隆明を逆読みした「緩衝世代」
「全共闘」「緩衝世代」の子どもは不登校になる

恵那の気質が生きている

日教組運動の強かった岐阜県恵那
真面目な奴は「過激派」になるしかなかった
恵那には土着的な運動の流れがあった
中学生の時から思想書を読みまくっていた
自分で責任をとるなら何をやってもかまわない
いちばんの疑問に答えてくれた大学教師
「論争コンパ」で徹底的に鍛えられた
徹底的な論争から支持が広がった
資質的には自民党代議士になるべきだった
党派崩れを再生する「再生全共闘」
しかし、高校生の不満が蓄積してしまった

大学解体は、ここまで進んだ

選挙を経て予備校講師になる
矛盾の真っ只中に入らなければだめ
「イエス」「ノー」に現実的な段階を入れる
相対評価から絶対評価へ
「子どもにはやらせない」という決意が社会を変える
「緩衝世代」のつくるテストは現実と遊離している
人間は毎日同じことをやるのがいちばん楽
予備校と高校の役割が逆転する
複雑なテストはもはや必要ない
若者の言語レベルが著しく低下している
最低限の国語力は必要だ
高校教育は瓦解状態に近い
予備校が高校生の社会性を育てる場に
予備校教師が高校・大学で教えざるを得ない現実
いまやほとんどの私大は全員合格する
大学のあり方自体が問われている
小・中学校の先生は年寄りばかり
全共闘の大学解体はついに実現した
ある種のエネルギーを持った若者は多い
カンボジアで国家や社会の始まりを知る
若者と向き合い、一から教える
全共闘を若い世代に伝えなくてはならない

書評・感想

「30年後の大学解体」(牧野剛著)を読んで

30年前に社会に横溢していたエネルギー、熱気が伝わってきたような気がした。それに比べ、現在の社会の静まり返りようはなんだろう。つまるところ「角を矯めて牛を殺し」てしまったのではないか。世の中をより良いものに変革、改善していこうとする社会の存続・発展のためには欠くことができない活力まで喪失させてしまったのではないか。これを回復させることが大きな課題だ。(三重県)
牧野さんの話はいつも常識にとらわれずに自由な発想と想像力に満ちていて、本書でも十分に触発を受けた。「全共闘」インパクトが風化している現代に改めてその歴史的意義を再認識させていただいた。(神奈川県 男性)